【ネタバレ無し映画レビュー】
韓国のゾンビパニック映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」のレビューをします。
予告編からも分かる通り、ロメロのゾンビやそのリメイク版ゾンビ、ブラピのワールドウォーＺを意識してます。
2017年「新感染 ファイナル・エクスプレス」
妻と別居中の主人公は、いい父親になりたいと思いながらも仕事ばかりで一人娘をないがしろにしていた。
母親に会いたいという娘を連れてソウル、プサン間の新幹線に乗るが、
謎のウイルスに感染している乗客一名（＝ゾンビ）から爆発的に感染が広がり、車内は混乱に陥る。
韓国の原題は「부산행（プサン行き）」、英題は「Train to Busan（プサン行き列車）」、
日本のタイトルは「新感染 ファイナル・エクスプレス」です。
どうしてこうなった。
日本のタイトルを決める企画会議を見てみたい。
「新幹線にかけて新感染すよ部長ｗｗｗ絶対ネットとかに取り上げられて宣伝効果バツグンすｗｗｗ」
とかいうやり取りがあったかも。
ホントぶん殴るぞ。
恐怖と共感
私はどちらも好きですが、ゾンビには速いゾンビと遅いゾンビがいます。新感染のゾンビはマッハです。
速いゾンビが大量に現れる恐怖、しかも車両の密室という逃げられない恐怖、マジ怖いです。
また、主人公（大沢たかお激似）は「いい父親になりたい」と思いながらも割とクズです。
列車に乗ってからも携帯で仕事ばかり、ゾンビ発生してからも他人を気遣う娘に
「他人はどうなってもいいから無視しろ」と平然と叱る安定のクズっぷり（正論だけど）。
逆に映画が進むにつれてどう成長していくのか、もしや成長しないのかと期待と不安で目が離せない作りになっています。
また、大混乱の中でも他人を気遣う娘、妻思いのおじさん、妊婦など、
絶対生き延びてほしいと共感できる登場人物だらけです。
共感するから恐怖も倍増です。
「映画のルール」が分からない！
ハリウッド映画や日本映画では、例外はあるけどなんとなくの「ルール」が存在すると思います。
１．有名人はなかなか死なないし、死ぬとしても見せ場がある。
２．子どもは死なないし、死ぬとしても直接的描写は無い（死ぬ場面は画面に映らない）。
３．主人公は最後の最後まで死なない。
だいたいの映画では上記ルールが当てはまるかと思いますが、韓国映画で上記が当てはまるかどうかが分からない。
まず新感染に出てる俳優、誰が有名なのか分からない！
みんな死にそうで生きそう、でも死にそうなハラハラドキドキ映画です。
そして、ハリウッドとか日本映画だと子どもが出てると安心する。子ども死なないから！（イットが怖いのはこのルールに則っていないから）
韓国映画のルールが分からないから、新感染では子どもも妊婦も容赦なく死んでしまうんじゃないかと恐ろしくなる。
もう最終的に全員死んでまうんじゃないかとエンドロールまでガクブルでした。
なぜ韓国映画のクオリティが高すぎるのか。
私はポン・ジュノ監督とオールドボーイ、猟奇的な彼女、
トンマッコルへようこそ、ブラザーフッド etc...しか観たことがないニワカですが思ったことを……。
韓国では映画会社、映画学校へ国が公的資金援助を行っています。
お金が無いなら国があげればいいじゃないと考えるとは。
国が映画を盛り上げてるから制作費が確保できる素晴らしい援助。
そして、韓国には「スクリーンクォーター制度」という、映画館は国産映画を一定期間上映しなさいという制度がある。
これによって映画館は大ヒット超面白ハリウッド映画を延々と上映できなくなるので、
お客さんも韓国映画を観る機会が増える制度（韓国内では賛否あるようだけど）。
韓国政府（もちろん映画制作者も）が世界に通用する映画を作りたいという気概を感じるし、実際通用してるからすごい。
ひるがえって日本映画、映画もどきのテレビスペシャル版か単館映画のふたつしかない感じがする。
別にどっちも好きだけど、質の高いエンタメ超大作が皆無なのがさみしい。
（三池崇史がエンタメ超大作を作ろうとしてる感じだけど、いかんせん中身がゴミや……）
日本映画は大好きだけど、映画制作の歴史が浅い韓国においていかれてる感が悲しい。
完全に勝ってるのアニメだけや……。
超一流と言っても過言じゃない。
「新感染 ファイナル・エクスプレス」のスピード感、ホラー感、ドラマ感、
映画としてのクオリティはハリウッド映画に引けを取りません。
私が2017年に観た映画のなかで、もっとも面白かった映画でした。
日本からもこんなエンタメ超大作が出たらいいのにと願わずにはいられんぬ。
