【ネタバレ有り映画レビュー】
日本の地下アイドルに焦点をあてたドキュメンタリー映画「TOKYO IDOLS」をレビューします。
アイドルの「柊木りお」を中心に、秋葉原の地下アイドル、AKB48などを取材した2017年のドキュメンタリー映画。
「アイドル」「ファン」「批評家(音楽家)」それぞれの視点から日本のアイドル文化に密着しています。
NETFLIXで観たけど、劇場公開されたのか、日本版DVDが出てるのか、まったく情報が集められなかった
(欧米版DVDは出てるようです)。
映画内で出てくる字幕がすべて英語なので、日本に向けて作られた映画ではないのかもしれません。
アイドル文化の変換
「日本でもっとも人気のあるアイドルバンド」としてAKB48が紹介されます。
総選挙が盛り上がったことでAKB48登場以来、小規模アイドルにも変化があり、みんな人気投票を行うようになったというのが興味深かった。
そういえばAKB以前はアイドルの人気投票って無かったように思う。人気投票で新メンバー選出とか。
あとは批評家の人が、握手会は性的なものって断言してたのが面白い。
「握手会をしているアイドルも、参加者も、性的なものと自覚していないのに、参加者は無意識のうちに性的快楽を得ている」とか。
握手会の映像では「ファン」「アイドル」「剥がしの人」の三すくみのような構図と流れるような剥がしの作業が(結構グイっといく感じも含めて)、
あまり見ない映像だったから面白かった。
でも握手会の映像見てて、なんだろう、この、
やってることは飲み屋のお姉ちゃんと同じなのに、飲み屋のお姉ちゃんと同列に扱うと誰かが怒ってきそうな恐怖感。
アイドルは奥が深い。
異質な視点
私はアイドルにも握手会にも肯定的だし、アイドルのライブはテレビで何度も見たこともあり、沖縄の地下アイドルのライブは一度現場で見たことがあります。
でも「TOKYO IDOLS」に出てくるライブや握手会を見ていると、自分の理解の外で行われているような、異質なものに感じた。
十代のお嬢さんと手を握り合ってお喋りするオジサンズの様子はなかなかショッキング。
いや否定はしないけど。否定はしないけども。
たぶん撮ってる人(監督)が中立的で冷めた目線でドキュメンタリー的なアプローチをしているからだと思います。
「私はアイドルについて肯定も否定もしません、ただ疑問に答えてほしい」というハテナ目線を感じる。
観ていると、熱中しすぎてる人を十歩ぐらいひいたところから眺めてる疎外感や冷静な目線が味わえます。
その淡々とした語り口で、
2年間密着したという地下アイドルの(自身はアイドルではないと言っていたけど)
「柊木りお」に密着します。
ライブの様子、自宅での動画配信の様子、
実家の両親へのインタビューまでぶっこんできます(家族をあげて応援しているという微笑ましい両親)。
また、柊木さんはグッズを通販販売していて、そのグッズは自分で梱包して伝票を書き送付するという、
ホント応援したくなるような下積みの様子、努力の様子が淡々と流れます。
また、この映画でもっとも特徴的なのはファンにも密着してること。
ファン同士でライブ前ミーティングをしたりチケット売り場に飾る花を注文したり、
純粋にアイドルを応援する姿に、こんなに好きなものができて熱中できるなんて羨ましいと心から思ってしまう
(でもやっぱりちょっと異質だけど……)。
そしてファンの方の、
「あと十年もしたら病気も出てくるだろうから、今を楽しみたい」と、
立ち食い蕎麦をすする映像とともに語られる独白が涙を誘う……。
制作者について
最後に……。
監督は三宅響子という人。
1976年日本生まれロンドン在住で、これまでにドキュメンタリー映画を数本撮っているようです。
監督としての情報が全然見つかりませんでした……。
「TOKYO IDOLS」は2017年のサンダンス映画祭で日本から唯一出品されたドキュメンタリー映画とのこと(受賞は逃しています)。
サンダンス映画祭が「どこかで行われている有名な映画祭」レベルの知識しかなかったので改めて調べてみました。
サンダンス映画祭とは、
アメリカ・ユタ州で行われているインディペンデント映画を対象とした映画祭(インディペンデントとインディーズ、自主制作は同義語と認識)。
ロバート・レッドフォードが主催する、世界でもっとも有名なインディペンデント映画の祭典で、
過去にはジェニファー・ローレンスの出世作「ウィンターズ・ボーン」、ドラマー必見ダークサイドララランド「セッション」が最優秀賞を受賞している。
三宅監督はまたこういう映画撮ってくれんかな。
「TOKYO IDOLS PART2 アイドルの逆襲」がぜひ観たい!