【ネタバレ無し映画レビュー(後半ネタバレあり)】

漫画家の押見修造さんが大好きです。
「惡の華」「漂流ネットカフェ」「ぼくは麻理のなか」など、
人間の欲望と葛藤を描くのが上手くて、物語の続きが気になってやめられないストーリーテリングが大好きな漫画家。

映画館のウェブページで押見修造原作という文字を見つけたので、原作は読んだことなかったけど予備知識無しで観に行きました。

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」のレビューです。

2018年「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」
女子高生の大島志乃は吃音症で自己紹介すらうまくできず、
「普通の高校生になりたい」と願いながらも友達ができない日々を送っていた。
ある日、ミュージシャンになりたいが音痴な加代と出会い、ギターに合わせ歌ってほしいと加代に頼まれる。

監督は湯浅弘章。
押井守監督に師事しパトレイバーの実写短編映画を監督していたそうです。今回が初長編監督デビュー作。
脚本(脚色)は名作「百円の恋」の足立紳。

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高校時代のアノ空気を完全再現

舞台は90年代の沼津市。「テレホンカード」「ルーズソックス」が久々に見られた。

休み時間の鬼ごっこかチャンバラのようなことをして遊ぶ男子、
アイスの店がオープンしたけど行ったか行ってないかという中身のない話をする女子、
めっちゃ懐かしくてヤバイ。

高校のアノ空気を完全再現してて、脳が痛くなったわ。

高校時代に戻りたいとは思わないけど、ノスタルジーに浸れて面白かった。

青春映画として

夢はミュージシャンという加代に対して、夢は普通の高校生になりたいという志乃。対比が泣ける。
友達がいなくてあわや便所飯というところから、友達ができて、打ち込めるものができて毎日楽しくなるシーン。
バスに乗って、自転車に乗って、路上ライブに向かうところの不安な感じ。


何このめっちゃ青春。
俺の高校時代にはこんなの無かったで。
映画中盤はカメラにも陽の光が入り込んできらきらしてて、登場人物の心情を表しているようです。

吃音と歌

志乃ちゃんを演じるのは南沙良。
何と言っても吃音の演技が秀逸!
エンドロールに「吃音監修」という人がいたから、演技指導は充分に受けたのでしょう。
吃音で言葉がうまく出ないまま声を絞り出して涙と鼻水でぐちゃぐちゃになるシーンが何回か出てきます。凄い演技。
そして歌! のびやかな歌声が心地いい。

あんな爽やかなミッシェルガンエレファントは初めて聴いたわ。
吃音の人がうまく喋れないのに歌は普通に歌えるパターンは本当にあるらしい。

また、加代を演じる蒔田彩珠のギターが「ギター始めたての人が一生懸命弾いてるギター」で、懐かしくて好感が持てる。

歌は「翼をください」からブルーハーツまで、爽やかに弾き語る姿が初々しくてかわいいです。

【ネタバレあり】ラストシーンについて

 

 

 

 

自分をバカにするのも笑うのも、全部自分だったと気づく志乃と、
志乃のことを受け入れるような加代の表情。
ラストの昼食時間のシーンでは、志乃が一人で昼食をとっている。
いろんな解釈ができるシーンだと思うけど、
和解しても一度壊れたものは簡単に戻らないシーンと私は解釈しました。
そして志乃が物置き場じゃなくて教室で昼食というのも、一歩踏み出したいという気概を感じた。

高校生の悩みや打ち込むものがある楽しさが観られた、爽やかマックスの青春映画でした。

 

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