【ネタバレ無し映画レビュー(後半ネタバレあり)】
マンガで(ラノベやアニメも?)異世界転生ものが流行ってますね。
現代の日本で生きていた人が死んで異世界(中世ヨーロッパがベース)で生まれ変わり、魔法使いになる話。
生まれ変わった先では最強の力を持ってて、全世界の人たちに慕われ好かれるという中学生が妄想しているような身もふたもない話がヒットしている。
異世界転生ものが流行っているこの現状について、みんな現実が嫌なんだなと思う。
つらい現実なんか早々に見切りをつけて生まれ変わりたい、そして転生先では何の努力もなく最強人物としてみんなに好かれたいけどそんなの無理だからせめてマンガの主人公に自分を投影したいという気概を感じるし、その気持ちめっちゃ分かる。
でも結局異世界転生なんかできないんだから現実で頑張ってたまに逃げて騙し騙し生きてちょっと成長してたまに笑える愉快な人生を送るしかないと思う。
そんな異世界転生ものと同じベクトルで作られたと思うスティーブン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」のレビューです。
2018年「レディ・プレイヤー1」
2045年、人々はVRシステム「オアシス」で仮想現実で過ごすことを生きがいとしていた。
ある日、オアシス創始者のハリデーからの遺言で「オアシス内に遺した謎を解いたものにオアシス運営の全権(=数百億ドルの資産)を与える」と全ユーザーへメッセージが届く。
主人公の少年はオアシスの謎の解明と、オアシスを支配しようとする大人たちへ戦いを挑む。
マンガ界では現在「封神演義」「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」「ハイスコアガール」など、それらが流行っていた頃学生だった子どもがお金を自由に使える大人になった時期を見計らってアニメ化するなどするオッサンホイホイをしかけるパターンが増えています。この傾向について私は懐かしい気持ちにさせてくれて本当にありがとうとしか言いようがありません。キョンシーブーム復活はまだですか。
映画の世界でもオッサンホイホイが起こっているように思います(いろんなもののリメイクだったり。ネタ切れともいえるけど)。
「レディ・プレイヤー1」も80年代回帰映画でした。
好きなキャラクターたちが夢の競演
「レディ・プレイヤー1」ではものすごい数のキャラクターが出てきます。ぱっと確認できるもので、
キティちゃん
ケロケロケロッピ
フレディ
チャッキー
タートルズ
春麗
アイアンジャイアント
三船敏郎
etc...
これらが画面いっぱいに出てきます。ぶっちゃけ最高です。
版権どうなってるんだろう。スピルバーグのスーパーネームバリューだから実現できたんだろうか。
私がもっとも好きなシーンが、デロリアン(ちゃんとバック・トゥ・ザ・フューチャー仕様!)とAKIRAのバイクがレース!
そしてメカゴジラ(昭和の!)とガンダムがバトル!
これを最高と言わずして何という!
夢の対決が観られたのでオッサンで良かったと思いました。
音楽はバック・トゥ・ザ・フューチャーの作曲家アラン・シルヴェストリ。バック・トゥ・ザ・フューチャーのパロディのような音楽も多数で、音も最高の映画です。
そんな最高なシーン・音楽と、最低なストーリーが同時進行する評価に悩む映画だった。
【ここからネタバレ!】スピルバーグはもうオタクじゃないと知った
主人公はVRだけが生きがいのオタク少年。どのぐらいオタクかというと、ゲーム内で出会った女性キャラ(中身が女性かも不明)に愛してると告げるぐらいオタクです。ネトゲ内結婚も辞さない猛者である。
敵のボス(元パリピなのは確実な金持ちオッサン)に対しても「オタクは匂いで分かるんだ!」と啖呵を切る真正オタク。
彼がDTなのは確実であるが、映画中盤、女性キャラ(美人)に出会うと君はきれいだと言って女性の顎をくいっとして今にもちゅーしそうな余裕を見せる。なんだそのセックスマシーンな態度。
そしてラストシーン、オアシスの支配者となった彼はかつてそれが生きがいであったにも関わらず「週二でオアシスを休みにする。現実も大事だからね」と言ってオアシスの画面を前に彼女とちゅー。自殺者も出るようなゲームを一人の子どもの意思で休みにするなんて、何してくれてんの。「オアシスを僕らの手にとりもどそう!」というスピーチに賛同して集まった同士を裏切る行為だと思うぞ。
オタク代表で弱者代表な彼が世界を救う姿を期待してたのに、こいつパリピやった。なんじゃそりゃ。金と権力を手にして変わる人間を目の当たりにしたわ。
スピルバーグはオタク少年の心を忘れないと思ってたのに、立派な大人になってしまったのか。さみしい。
人を殺しすぎる民間企業
いち民間企業が町を爆破して、殺人を犯し、街中で銃をぶっ放す展開はどうなんだろう。
株式会社らしいけど(株主について言及するセリフがある)、こんなあからさまにいろいろ壊しまくってたら株価暴落じゃね。
CEOが銃を片手に未成年を街中で追いかけまわし、それを町中の人に目撃されてるなんて、現代ならSNSに拡散されて社会的に抹殺されるぞ。
この映画の中の未来世界では警察が機能してないのかと思ってたけど、ラストで駆け付けたパトカーにしっかり逮捕されてるし。意味わからん。
制作者の手抜き感があからさまな映画
「レディ・プレイヤー1」の最大の魅力で見どころは「大量の有名キャラクターが一堂に会する」様子を見せることです。
ただ、キャラを見せれば他はどうでもいいのかと言ったらそうではない気がする。監督がこれまで名作を量産してきたスピルバーグなら尚更。
まあスピルバーグは「インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国」で核爆弾で被爆したインディがシャワー浴びただけで大丈夫だった描写も撮ったことがあるので適当なところもあると思うけど、大人向け映画では今でも名作を作ってる監督だったので残念で仕方がなかった映画でした。