【ネタバレありマンガレビュー】

先日観た映画で、押見修造さん原作、吃音症の女子高生の高校生活を描いたマンガ「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」レビューです。

映画レビューはこちら↓

爽やかでぐちゃぐちゃな青春映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」

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映画を観ててムカついた原因が分かった

映画・原作ともに、志乃ちゃんの学校の先生が吃音について「一緒に頑張って治そう」「リラックスしてね」と声をかけてくれます。
先生は心から心配して志乃ちゃんと頑張っていきたいと思ってるんだけど、なぜかすげー腹立つ。

映画を観たときに感じた腹立つような違和感を言葉にできなくて、自分の性格が悪いだけかと思ったけど原作を読んでその理由に気づきました。

志乃ちゃんを理解してくれる親友の加代は、うまく喋れない志乃ちゃんに「喋れないなら書けばいいじゃん」と手帳とペンを差し出します。
先生はうまく喋れない志乃ちゃんに頑張って治せと言います。
志乃ちゃんを受け入れて次のステップを促す加代と、志乃ちゃんを受け入れず全否定して親切の押し売りをする先生。

クソムシが!

価値観の押し付けほど嫌なものは無い。

志乃ちゃんを理解してるようで追い込んでる先生の姿に、自分もこうならないように気を付けようと思ったわ。

映画との相違点

志乃ちゃんの将来の夢の話、バス停のシーン、ラストシーンなど、映画を観て好きだったシーンが原作には無い。
また、原作は物語がテンポよく進むけど、映画は一つ一つのシーンに時間をかけて丁寧に描いています。
面白いマンガをより面白くしたいという制作者の気概を感じるし、実際めっちゃ良くなっています。

だから原作はダメかというと全然そうではなくて、
原作は緩急のつけ方(激しいシーンから急に静かになって登場人物の心情を表したり)、
漫画的演出(線が荒くなったり)がストーリーを盛り上げます。

映画と原作は別だけど、それぞれの良さが楽しめたので原作買って正解でした。

そして、志乃ちゃんが「しのかよ」を辞めた原因はマンガの方が分かりやすい(映画は分かりにくかった)。
自分を一番に理解してくれる親友が、自分をバカにした男に心を許してる(しかも親友は男に恋愛感情を持ってるような描写がある)。そしてその男は自分に気があると。
唯一のより所だった「しのかよ」を自分が壊しそうで、親友を嫌いになりそうで逃げた、と解釈しました。

映画だと男が「弱者」「いじめられっ子」で、加代は恋愛感情が無く同情してるだけなので、志乃ちゃんがしのかよを抜ける原因が分かりにくかった。

また、原作の「あとがき」が面白い。

あとがきでは、押見修造さんは吃音と書かれていた。実体験をもとにこのマンガを描いたと。びっくり。

そしてマンガ内で(映画でも)、「吃音」「どもり」という言葉が使われていないのは「誰にでも当てはまる話だから」と、吃音マンガにしたくなかったとのこと。

「これ(マンガ・映画では吃音)が無ければ自分はもっとできる」と思う志乃ちゃんと作者の悩みは、たぶんみんな共通の悩みだと思う。

その後の話

続編は、絶対とは言わないけど、おそらく無いでしょう。
でも劇中には無い卒業を描いたこの画像は最高。
前売り券特典ポストカードのこの書下ろしイラストを、映画の役者が再現した画像も微笑ましい。


映画・原作にもないシーンで、めっちゃ希望があるいい画像。

映画もマンガも、登場人物の(高校生特有の)心情や機微を描いた素晴らしいドラマでした。

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