【ネタバレ無し映画レビュー】

2018年末には30分の新規映像を追加した完全版の公開も決定した「この世界の片隅に」。
千代田区の昭和館で特別企画展も開催されていて、先日行ってきました。
原作者のこうの史代さんは昭和館で取材をして「この世界の片隅に」を書き上げたとのこと。
企画展では、原作漫画のページと一緒に当時の器具、暮らしの紹介などが展示されていてめっちゃ面白かった(なんと無料で観覧できる)。

「この世界の片隅に」は、2009年に「マイマイ新子と千年の魔法」がヒットした片渕須直監督によるアニメ映画。
「マイマイ新子と千年の魔法」と同じく繊細なタッチ描いていて、日本の昔の田舎という世界観も似ています。

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戦時中の「普通に暮らし」が新しい!

「この世界の片隅に」2016年公開
昭和19年、広島市で暮らすすずのもとに、呉市で軍法会議録事(録事とは書記官で、兵役は無かったようです)として働く周作が結婚を申し込む。
一度も会ったことのない周作のもとへ嫁に行くすずの呉での生活を描く。

昭和19年から昭和21年までを描く映画です。

戦争といえば「つらい」「くらい」「きつい」「残酷」なイメージがあって、特に戦争映画は大別すると、
狂気に走るかネガティブに走るか二分化する傾向があるように思う(「フルメタル・ジャケット」か「火垂るの墓」か)。

「この世界の片隅に」は戦時中の普通の暮らしを描いています。
食べるものが少なくて困ったり、恋愛に悩んだり、戦争の影はあるけど、その中で普通に暮らしている様が新しいと感じた。

私が衝撃的に新しいと感じたのは玉音放送のシーン。
ラジオから昭和天皇の「タエガタキヲタエ……」という放送が流れる中、登場人物の一人が
「よく分からないけど、戦争終わったってこと?」

と言うシーン。
そりゃそーだ、言葉が難しくてよく分からんし、
当時もきっと今と同じで右でも左でもない人もたくさん居たんだろうと思った(当時はそういう概念も無いと思うけど)。

衣食が少ないなかその日暮らしをしている人たちにとっては日々どう生きていくかが最重要課題で、その他は次、だったのかもしれない。

ただ映画後半は戦争に翻弄され普通の暮らしもままならず、衝撃展開を迎えます。
そして、劇中頻繁に出てくる年月を知らせる字幕。
昭和20年8月には広島市に原爆が投下されるので、カウントダウンのようにどきどきする。

また、公開当初は声優に能年玲奈こと「のん」を起用したことも話題になったかと思います。

のんとすずのキャラクター、声質、演技、どれも合っているし、実写版ものんに演ってほしかったという人も多かったと思います。
大人の事情で叶わぬ夢と分かっていても願わずにはいられんぬ。

クラウドファンディングで制作

内容も面白いし2年以上ロングランヒットしている映画だけど、
制作前は「ヒットが見込めない」ということで出資してくれる会社が無くて制作費をクラウドファンディングで募った映画でした。
クラウドファンディングで苦労して作った映画だから、もしかしたら↓の事件につながったのかもしれない……。

スペシャルサンクス事件

私は7月からTBSで始まったドラマも毎週楽しみに観ています。
アニメそのままの街並みやCGの戦艦大和や爆撃機、久石譲の音楽など、映画並みにお金かけてるし内容も面白い。

ただ、2話目のラスト、エンドロールを見てて気づいた

special thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」の文字。

実写映画化するのかと思ってびっくりしてネットで調べると、どうやらアニメ映画に対してスペシャルサンクスしているとのこと。
そしてアニメ「この世界の片隅に」製作委員会が公式ウェブページとツイッターでテレビドラマからのスペシャルサンクスについて
映画に関する設定の提供を含め、一切関知しておりません
と明記するという珍しい事態になっています。

単に問い合わせが多すぎてすべてに対応できないからウェブで明記したのか、
勝手にありがとうとか言ってっけど関係ねーから! とムカついてるのかは神のみぞ知る……。
制作費出資しなかったくせに売れたらアイディア借用しやがってと恨みがあるかもしれん。いや憶測だけど。

完全版公開決定!

アニメ映画の方は制作費が足りなかったので原作の一部を映像化できていなかったとのこと。
監督は当初から「ヒットしたら完全版を作る」と公言していたようです。
映画の大ヒットをうけて、ついに年末に30分の新規映像を追加した完全版、
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が公開されます。

沖縄での公開はきっと早くても年度末だろうけど(フィルムたくさん刷ってほしい)、

これを楽しみに年度末まで生き抜きます。

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